Free Tibet
"Free Tibet" は、この "Free" をどういった品詞として解釈するかによって意味が変わる。なかなか味わいのある言い回しだ。
チベット亡命政府(ダライラマを慕う穏健派)は、宗教や自治という点で「自由(Free)なチベット」を求めている*1。一方、チベット青年会議(反猊下な過激派)は中国からの独立という意味で「チベットを解放(Free)せよ!」と唱える*2。チベット人民の同床異夢を見事に言い表しているのだ。
ところで、欧米諸国の本音は「チベットはタダ(Free)」かもしれない*3。つまり、人権問題で中国を強請ればチベットの天然資源は「タダ」で手に入る(参考*4)。実際、スピルバーグ監督*5やリチャード・ギア*6はご存知なかったようだが、北京五輪の成功を狙う中国はダルフール問題の解決に寄与している(参考*7)。参考リンク(外務省のサイト)にもある通り、五輪というネタで中国政府が脅迫された形に近い。国際外交において一度相手に屈すれば、同じ手で何度も脅される*8。
要するに、現在の中国政府は国際社会という観客の前で踊る踊り子だ。踊り続けるに従って衣装が次々と脱がされていく。いつかは丸裸にされるだろう。つまり中華人民共和国の崩壊だ。このままでは避けられない。
だが、来るべき「終わりの日」を避ける手段がないわけではない。例えば中国全土に連邦制を採用するといった大規模な国家改造だ。しかし、連邦制を採用したり、諸地域に「高度な自治」の権利を与えてしまえば、地理的・地政学的・歴史的な観点から考えて現体制を無傷なままで温存できるとは考えにくい。つまりは究極の選択だ。即ち、共産党体制を解体するか、国家自体が崩壊するか。
遅かれ早かれ、また程度の差こそあれ、中国は変わるだろう。共産党体制を解体して自由民主主義を採用すれば、中国は欧米諸国にとって安心して同盟を組める国になる。China-free*9ならぬ、Free China *10が中国本土で実現するのだ。もちろん国家自体が崩壊し、中国全土が混乱すれば少なくとも軍事的な脅威はなくなる*11。どちらの道を辿るのであれ、そのとき中国は国際社会にとって政治的あるいは軍事的に「敵」ではなくなる。
Free Patani! - タイ王国に反撃しよう!
中国が倒すべき敵ではなくなってしまったときのことを考えてほしい。敵がいない世界というのは非常に不安だろう。そこで少数民族を武力で弾圧し、現在もなお文化大虐殺を行っているもう一つの国の存在を知っておいて欲しい。タイ王国だ。
タイ王国は深南部三県(パタニ地方)に住む原住民に対して弾圧を続けている。パタニの人々はタイ人とは異なるマレー系民族であり、本来ならばマレーシアに属するか、タイから独立すべき人々なのだ。
民族自決の権利を求めてタイ王国と闘争を続けているパタニ連合解放前線に支援をお願いしたい。そうすれば、晴れてあなたはテロリストの仲間入りだ。それこそが Free Tibet の本質でもある。
ダライラマ14世がノーベル平和賞に選ばれたのも、この「本質」を巧みに回避する独特な思想ゆえだ。そういえば仏教の極意は諦めにある。そう、妥協は敗北ではない。真の勝利とは厳かな敗北と共にやってくるものなのだ*12。
*1:free を形容詞(最も一般的な意味)として解釈。
*2:free を命令形の動詞として解釈
*3:free を形容詞「無料の」という意味として解釈。
*4:木材, 金, 銅, ダイヤモンド, 石油, そして何よりも大量の水源。
*5:ハリウッド色全開の売れ線の映画ばかり作る日本マニア。たまに政治的に偏った映画も作る。
*6:他国の文化に無頓着だったためにインドで「強姦騒動」を引き起こしたアメリカの俳優。この人もやはり日本オタク。
*8:日本政府の姿勢は Free Tibet ならぬ、Tibet-free(チベットをなかったことにする)のようにも見える。理由は言わずもがな。
*9:中国製品の一切を輸入しないという運動のこと
*10:「自由な中国」という意味であり、一般的には台湾を指す言葉。
*11:ヨーロッパ全土を巻き込む第一次世界大戦時の欧州諸国やロシア革命直後のロシアを想像してみると良い。
*12:行間を読めない、あるいは読む気がない方のために注記しておきます。タイ王国は一種の比喩として挙げたものに過ぎず、kilemall はパタニ連合解放戦線とは何の関係もありません。