フェアトレード幻想

スターバックスといえばフェアトレード。気軽に楽しむにはちょっと高めだけど、世の中に立ってると思えば安いもんだよね。

…という感じで企業イメージ向上+収益率を上げている星鹿珈琲店Starbucks)ですが、実際フェアトレードって貧困救済に役立ってるんでしょうか。ちょっと思考実験してみましょう。
(この記事の内容は今後修正される可能性があります)

前提:フェアトレードって何?

まずフェアトレード(公平な取引)を簡単に説明しましょう。アフリカの貧しい国を想像してみて下さい。こういった貧しい国々の大抵は、欧米列強に植民地にされた過去を持ちます。人種的に劣ってるんだから仕方ないよね*1。で、植民地にされた国の人々は大規模な農場に労働者として雇われ(駆り出され)たわけです。フルキャストもビックリなくらい使い勝手の良い労働者だったんですね。まぁ人種的に劣ってるワケだし…。

その大規模農場では、欧米列強の人々のためだけに色んな作物を作られていました。主に嗜好品です。嗜好品といっても美少女フィギュアなどではなく、胡椒やバナナ、そしてコーヒー豆といった暑い地域でなければ育ちにくい植物ね。で、こういう植民地の国々は流行もあって次々と独立国になったんだけど、どちらにしろやることがないので押し付けられた農場を引き継ぐか、ヒマなときは元農場主だった白人をぶっ殺したり*2しているわけです。

でもまぁ、独立国になったからといっても「人種的に劣っている被植民地の土人ども」とマトモに商売をやろうとする白人なんていません。だから、生産される作物はグッドウィルなんて生ぬるいくらいの勢い(安値)で買い叩かれています。一部の人は、これを先進国による後進国に対する搾取*3だと主張しています。で、こういう搾取が貧しいアフリカとかの農民たちをますます貧しくしているという考え方が生まれたわけ。

では、こういった「不公平な取引」を「公平な取引」にすればどうなるでしょう。貧しいアフリカの農夫たちが人間らしい生活を送れるようになるかもしれませんね!はい、これがフェアトレードの精神であり、基本理念です。

疑惑:フェアトレードが構造的貧困をもたらす?

結論から先に言えば、フェアトレードは貧困救済に役立つというより、貧困を助長するかもしれません。

フェアトレード以外のコーヒー豆をどうなっちゃうの?

第一に「フェアトレード以外のコーヒー豆をどうなっちゃうの?」という問題。つまり、フェアトレードの条件下で作られるコーヒー豆の生産者たちは確かに多少は豊かになるかもしれない。でも、フェアトレードの条件下になくとも良質のコーヒー豆を作っている農家は存在する。彼らは良い作物を作っているのに見返りが少ない。良いコーヒー豆を作るためには色々な努力がいる。こうした努力は殆ど報われないことになる。結果として彼らの労働意欲を削ぐことになるだろう。すると豆の品質は下がる。品質が下がると買ってもらえなくなる。こうしてフェアトレードにあぶれた農家は更に貧しくなる。逆にフェアトレードに守られた農家は適当にやってもある程度の実入りがあるので、作物の品質には気を使わなくなるかもしれない。それはそれで別の問題が発生しそうだね。品質を守りたい?だったら、元々ブランドのコーヒー豆、例えばブルーマウンテンとかだけを保護してみる?じゃあノーブランド豆の農家はどうなっても良いの?本末転倒だよね。

要するに、フェアトレードは基本的に「えこひいき」の延長だってこと。助けられる数には限りがある。エコロジーではあるかもしれないけどね。

まだ過去の遺産で食わせるつもりなのか?

第二に「まだ過去の遺産で食わせるつもりなのか?」という問題。フェアトレードさせるのは良いけど、その中で取引される生産物の大抵が大昔に肌の白い人たちが黒い人たちに押し付けた産業なんだよね。その国まるごと単一の作物しか扱ってないというような冗談みたいな話が現実だったりする。「チョコレートはガーナ」なんてた売り文句が脳みそに染み付いてるでしょ?子どもの頃はガーナが国だなんて知らなかったよね。で、こういう国は単一作物が高値安定で推移しているときだけ、何とかやっていける。だけど値段が下がったらサドンデス。突然死しかねない。だから、国全体が一瞬で破綻するような危機を一年の間に繰り返し経験してる。

うん、フェアトレードによって買取価格がある程度安定するんだよね。良い事じゃん?(←静岡弁)でも、価格が安定するということは、それで何とか食べていけちゃうってこと。つまり、この先ずっと同じ作物(例えばカカオ)を作り続けるキッカケを与えちゃうかもしれない。そして、それは新しい産業、特に第二次産業の発展を阻害する原因になる可能性がある。何故だろう。何しろ人種的アレだから?違う。確かに第一次産業の安定は、上位産業が発展する土台である必要不可欠な条件。でも、ガーナのような国々ではたった一つの作物に国家の命運がかかっている。だから、おいそれと第二次産業に移行することは利益よりも不利益の方が多い。だって、別な産業を始めるためには、ある程度カカオの生産を減らさなきゃならないでしょ。カカオの生産を減らす=国家破綻の確率UPだから。つまり、国内経済が安定するには、あくまで作物の多様性がある程度確保されている必要がある。ガーナ政府がそこのところを分かっていないハズがない…多分。

要するに、フェアトレードは貧しい発展途上の国々が工業国へと飛翔する翼を腐らせてしまうかもしれない。体が弱い人にウィルスの免疫を付けようとワクチンを打つようなもの。体が弱いだけに副作用の危険性が思ったより高いかもしれません。

そもそも何がフェア(公平)なの?

第三に「そもそもどれくらい何が(公平)なの?」という問題。確かに今は適正で公平な価格で取り引されているかもしれない。だけど、物価変動とか景気とかで貨幣の価値って一定不変じゃないよね。どのくらいが「適正な」価格なワケ?どのくらい農家の利益率を上げれられるプレミアム(割り増しの価格)が適正と言えるのかな。というか輸入側が自分で価格設定している場合も多いし。それに、支援国における物価の安定した上昇傾向が見込めるときはどうだろう。「フェアトレード」の一言で取引価格を一定に設定すれば、むしろ救貧の衣を着た不公平貿易の温床になっちゃう可能性があるかもね。冗談っぽく言えば、バブル期における公務員の給料みたいなもの。

更に言えば、割り増し分の品質向上が見込めるわけでもないのに、先進国の人々がそのプレミアム分を支払うのって公平なワケ?道徳料金?天国への免罪符が変えるワケでもないでしょうに。フェアトレード商品を購入してコインが農家の懐に入ると霊魂が天国へ飛び上がる*4…のか?

まぁ、フェアトレードで貧しい国が順調に発展をするのは良いことだとしよう。だけどフェアトレード制度が功を奏し、少しずつ発展していけば、いつかは制度をやめなければならない時期が来る。必然的に。そうじゃないと日本の中国に対するODAみたいになっちゃうね。つまり、金を貢いでるだけってこと。だけど、いつフェアトレードをやめるワケ?早すぎれば生活保護モラルハザード(正式名称不明*5)が起きるし、遅すぎれば公共事業漬けで崩壊した日本の地方都市みたくなっちゃう*6

たとえ収益が上がって生活が一時的に楽になったとしても、今度は国内の政府が直接的に農家を搾取し始めるかもしれない。年貢の納め時ってこと。働けど働けど我が暮らし楽にならざり。貧しい国の政府は税金が欲しくて仕方がないもんね。儲けた分の殆どを国家に持っていかれちゃうんだったら結局同じこと。やっぱり労働意欲は下がるよね。まぁ、単純な作業量はフェアトレードで減るかもしれない。けれど、まともな資本主義国家でないところでは、収入UPで生活が良くなるなんて保障は全然ないワケだ。だから百姓一揆もなくならないんだね。でもって内戦で政府自体が機能不全になって崩壊国家→はいスーダンソマリアザンビア*7

つまり、フェアトレードは別に言うほど公平な制度ってわけでもないワケ。心ある小規模団体が細々と慎重に活動する分には公平性が保たれるかもしれないけど、ネスレやイオンに代表されるような(悪徳)大資本企業が参加しちゃってる現状を見ると何だかなぁって感じ。

結論:No one can help - 誰も何も役に立たない

ということで、フェアトレードは必ずしも最善の救貧手段というわけではないかもしれません。むしろ貧困を助長するかも。あるいは構造的な貧困の種をばら撒いちゃうかもだ(戸田奈津子風)。

安くて良いモノが手に入るならば、それに越したことはない。頭では「倫理的に正しい」経済行為だと分かっていても、値段に釣り合わないようなモノは避けたいもの。それが人情です。というか、それが市場原理というヤツです。ましてや、その倫理的な「正しさ」すらあやふやなモノだとしたらどうでしょう。「フェアトレード認定という新手のブランド商売?」とか、「フェアトレード団体自体が中間搾取しているのでは?」という疑念を持つ人々が現れるのも不思議ではありません。結局、フェアトレード自体はまだまだ議論の余地が残る経済思想(運動)なのです。

さて、「じゃあ貧しい国々を救うにはどうしたら良いんだ!」と火病を患う方もいることでしょう。落ち着いて下さい。ハッキリ言いましょう。貧しい国々を救う方法はありません。貧しさが先進国に対するテロの温床になっています。あるいは地域紛争で人類史上最悪の大虐殺が起こる原因になっています。それは事実です。貧しさとは人権侵害なのです。しかしどうしようもありません。無力感を味わって下さい。彼らは人種的に劣ってるんです。…という脳内補完でやたらめったら侵略しまくったツケを今払っているんです。

しかし、こう発想を転換するもできます。私たちは搾取する側です。搾取されているのは私たちではない。楽してハッピーな立場です。それで良いじゃないんですか?貧しい国の将来なんて興味も湧きませよね。貧しい国の人々がどれほど苦しもうが、私たちは苦しくないんです。搾取を満喫しましょう。小難しいことは考えず、スターバックスで少し休みませんか。

*1:というネタで白人とか大和臣民とか超頑張ってた。

*2:参考リンク:http://www.africancrisis.org/Photos45.asp ←英文のみ。慣れない人が見ると数日は落ち込むくらいグロテスクな画像を含みます(下の方にいくほど屍肉化するので注意!)。

*3:参考リンク:「スターバックス超カッコイー」とか「フェアトレード運動の目的って何よ?」あたりを読んでくれい。

*4:カトリックが免罪符を売るときに使った売り文句のパロディ。英語では "As soon as the coin in the coffer rings, the soul from purgatory springs"

*5:生活保護とは「ある水準以下の生活困窮者」を救うことを目的としている。だから、原則的には保護水準を越えた瞬間に支給が打ち切られるものだ。しかし、その水準を越えた瞬間に支給を打ち切ると、今まで支給されていた生活保護費分が収入から純減することになる。つまり、一瞬にして保護水準世帯に逆戻りしてしまうのだ。だから頑張って仕事をし過ぎると収入が保護水準を超してしまい、支給を打ち切られ、生活がより苦しくなってしまう。要するに下手に頑張っただけ損する。そういうわけで、生活保護を受けている人はあまり働かなくなったり、不正受給し続けようとする…という構造的問題。誰かこの現象の正式名称を知ってたら教えて下さいね。

*6:地域経済が公共事業を前提として組み立てられてしまうから、公共事業が提供されなくなった途端に地域経済全体が崩壊する。確かに公共事業といえば普通は土建産業。だけど、フェアトレードで守られる作物は国家経済の基盤となっている。だから公共事業の拡大版っぽいみたなものなんだね。

*7:事実上、今のザンビア中華人民共和国アフリカ領みたいなもんだけど。っていうか世界の名立たる崩壊国家の殆どを手中に入れようとしてる中国→ http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/1849/104.html 暴落した著名企業の株を買い漁るヘッジファンドみたいだ。尊敬に値する外交感覚かと。