学歴社会をめぐる言説

学歴社会を肯定する側も否定する側との会話がしばしば噛み合わないのは、お互いの立場が批判あるいは擁護している対象が異なっているためである。どんな社会制度であれ、ある側面を見れば良い点があるし、別の側面を見れば悪い点が存在する。独裁制やナチズムといった一般的に否定される社会体制でも、肯定できる点が全くないわけではない。

その社会制度の利益と損失の両側面を吟味した上で、それでも肯定的側面の方が勝っていると考えられるならば、その制度は採用に値する。また若干否定的な色が濃いとしても、その負の側面が改善可能な点であるならば、改善を条件として採用しても良い。その程度のことである。

繰り返すが、どんな社会制度にも良い面と悪い面がある。それらの特徴を洗い出す必要があるのは確かだ。しかし、そういった性質を列挙することが即ち制度に対する批判あるいは擁護することだと考えるべきではない。私たちがしなければならないのは、最終的な功利計算の方なのである。