南米は左派政権だらけ

15年くらい前まで、南米は「IMFを通してアメリカ合衆国に併合されるかも」と冗談で言われていた。だが、ここ数年の流れであっという間に南米中で左派政権(IMF世界銀行に反対=反市場原理主義を掲げる立場)が登場するに至り、(中道左派も含めると)コロンビアとパラグアイを除く全ての国で左派政党が与党になっている。

面白いもので、この左派政権の多くが反米(対米非服従)を唱えている。若干違和感のある表現だが、現在の南米においては、左翼がナショナリズムの担い手になっていると言えるだろう。まるで戦後直後の日本のようだ。

左派政権が続々と登場するにつれ、経済においてはメルコスール、情報通信の分野ではテレスールといった形で南米諸国が急速に結束を強め始めた。その盟主となる国は、日本でも有名な反米主義者チャベス大統領率いるベネズエラだ。どんな形であれ、もはや南米がアメリカ合衆国に併合されることはないだろう。

南米におけるベネズエラのように、中東においてはイラン*1サウジアラビア、西欧においては欧州連合、東欧及び中央アジアではロシア、東アジアにおいては中国(+ユーラシア大陸東側を上海経済協力機構)、そして東南アジアはASEANと世界の各地域にアメリカの覇権とは独立した政治構造が成長しつつあるのは確かだ。

これがアメリカの外交政策の失敗によるものなのか、あるいは意図的な世界の多極化*2を狙った戦略なのかは判断できない。少なくとも現象面から見れば、アメリカの覇権が世界の各地に届きにくくなっていることだけは確かなようだ。

以下に南米諸国における左派政党の躍進振りを確認できるよう、各国の与党と大統領名を列挙した。

ブラジル連邦共和国

  • 与党:労働党(左翼)
  • 大統領:ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ

ガイアナ協同共和国

  • 与党:人民進歩党(国自体が共産主義的政策を採用)
  • 大統領:バラット・ジャグデオ

ウルグアイ東方共和国

エクアドル共和国

チリ共和国

与党:チリ社会党(左翼)
大統領:ミシェル・バチェレ*5

スリナム共和国

与党:スリナム国民党(中道左派*6
大統領:ルナルド・フェネティアーン

ベネズエラ・ボリバル共和国

ボリビア共和国

ペルー共和国

パラグアイ共和国

与党:国民共和協会(中道右派
大統領:ニカルノ・ドュアルテ・フルトス

コロンビア共和国

  • 与党:プリメロ・コロンビア(右翼)
  • 大統領:アルバロ・ウリベ・ベレス

右派政権を持つ二国のうち、コロンビアはベネズエラと国境を接している。こうなると、コロンビアの背後にアメリカ政府の暗躍があるという噂は本当…のような気がしないでもない。

*1:イスラエルが中東におけるアメリカの出先機関であることは疑いないが、周辺国との関係を考えると地域の盟主とは言えないだろう。

*2:田中宇氏が主張している説

*3:カトリックの国なのに女性が大統領。

*4:大統領チャベスが有名なブッシュ批判の演説(「硫黄=悪魔の臭い」発言)をしたとき、「ブッシュを悪魔に比べるのは悪魔に失礼だ。悪魔は邪悪だが、少なくとも知性はある」と述べている。

*5:ここもカトリック国なのに女性が大統領。

*6:スリナム国民党は経済イデオロギーとは無関係な民族主義的な政党だが、元々は中道左派の政治連合である「民主主義と発展のための新戦線」の一派であった。