中国産加工食品における残留農薬問題: 不安感の払拭こそが重要

前回のメタミドホス問題に関して「残留農薬の問題ではない」と書いたが、新たに発見された別種の農薬「ホレート」に関しては残留農薬の問題だ。ちなみに問題となった加工食品はアスパラを包んだロールカツであり、このアスパラから問題の薬剤が検出されたらしい(参考)。

さて、ここにきて消費者に情報を提供する側が憶測に基づいて中国産食品の危険性を喧伝するようになってきた。

検査態勢の差を理解した上で、高濃度農薬を使い生鮮野菜としては輸出できない野菜をわざと加工食品に回していたのだろう

この厚生省官僚は、天洋食品で使われている野菜の全てが中国産であることを前提として発言している。だが、中国産の加工食品に使われている野菜は、より安価なベトナム産の方が多い。果たして山東仁木食品*1で使われる野菜は全て中国産なのだろうか。そういう情報こそ厚生省が調査し、公開すべき情報だ。

実際、ベトナム産野菜の安全性は中国産のものよりもかなり低い*2。過去に前科もある(参考)。もしベトナム産野菜が使われているとするならば、加工食品の残留農薬は単純に中国だけの問題とは言えなくなる。中国食品を叩くだけでは消費者の不安感は払拭できない。

極論を言えば、外国産野菜の一切を輸入禁止する以外に根本的な解決はないだろう。だが、全てを輸入禁止すれば、必然的に国産野菜の価格は暴騰する。当然、消費者の大多数は損をする。現実的な話ではない。結局、もう少し前向きな妥協策を検討する以外にないだろう。

ところで、上に挙げたニュースにある垣田氏(消費者問題研究所代表)による発言にも同様の決め付けがある。

故意に混入したとされるギョーザ事件と違い、普通の食品から高濃度が検出されたことは事態がより深刻。中国国内で禁止農薬が堂々と使われていたことを意味している。

やはりそう断言は出来ない。曲がりなりにも研究所の名を冠しているならば、せめてアスパラの産地を明らかにした上で発言して欲しい。そうでなければ、いたずらに消費者の不安を煽る結果にしかならない。

*1:今回問題となる商品を輸出した食品工場

*2:http://d.hatena.ne.jp/shukaido170/20080224