難しい言葉を使う前に会話したらどうだろう。ver1.3

注意!:以下の文章(横線以下の本文)には kilemall による「大きな誤解」があります。その誤解とは、以下の引用文の著者(cogni氏)は、安眠練炭氏ではないということです。結果として、安眠練炭氏は「批判を行う前に再読したらどうだろう」というのがこの記事のオチになっていることを指摘して下さいました。ありがとうございます。

安眠練炭氏による事実誤認の指摘に感謝すると共に、内容についての具体的な批判がないことにも満足する kilemall でした。

http://rosebud.g.hatena.ne.jp/cogni/20070325/p2

一方で、上のエントリには引用した会話の本人(cogni氏)による補足が加えられていました。以下のような内容です。

  • 自然主義的誤謬に関しては俗流解釈だった。
  • 「二次元だけに興味がある」という主張ではなかった。
  • 意図的に哲学用語を使うことで面倒な会話を避ける意図があった。
  • 普通の会話とは何か(これは恐らく質問)。

以上の箇所に対して kilemall の釈明は以下の通りです。

最初から「面倒な会話を避ける意図」であったのなら、俗流解釈でも全く問題なかったと言えます。その意図では、非常に賢明な会話(スルーの技法)だと思われます。ということは、結局、cogni氏がネタでやっていたことに安眠練炭氏がマジレスしちゃったという感じになりますか…。

「二次元だけに興味がある」という主張は、kilemall の勘違い&深読みです。陳謝します。確かに普通に考えれば、「三次元に興味を持つべき」に反駁する分には、「必ずしも三次元だけに興味を持つべきとは言えない」で十分です。しかし、実際の cogni氏の意図は「今は現実の女性の相手をするのが面倒なだけで、二次元でも三次元にもOKである(=興味はある)」とのことなので、kilemall のいう「普通の会話」が成立していないことには変わりません。

普通の会話とは、「自分の意図を相手に伝える」という目的を達成している会話のことです。例えば、以下のような会話では必ずしも相手を説得できるとは限りませんが、相手の知能が著しく弱くなければ意図を伝えることには成功します。

A「君が三次元に興味がないのは正しくない」
B「どうしてですか?」
A「子供が産めないじゃないか。生物は子孫を残すものだ」
B「二次元相手では子どもを残せないから、三次元に興味を持つべきだということですね?」
A「そう、君はオタクだから三次元に興味がないんだろう?」
B「いいえ、今は現実の女性を相手にするの何となく面倒なだけで、自分は基本的に二次元でも三次元でもOKですよ」
A「何で三次元だと面倒なの?」
B「リアル女性とのお付き合いは時間と金*1かかるので…」
(という感じで会話が続いていく)

もっとも、どんな会話をしても理解してくれない人物*2というのは存在しているので、そういう場合は(そういった人物の存在を)現実として受け入れた上でスルーのテクニックに逃げるのも人生における「一場面(感情+場所)」と言えるでしょう。



http://d.hatena.ne.jp/trivial/20060315/1142349415

上のエントリの著者(=安眠練炭氏)は、そもそも「自然主義の誤謬」という概念を間違って捉えているというか、俗的な解釈をそのまま使っていたりするんだけど、それは余り突っ込まないでおこう*3

まぁ、哲学的な用語を持ち出して自分の立場を擁護するのは格好良いし、何となくメタ認知能力の高さを醸し出すことも出来る*4

さて、著者は以下のような考え方を「自然主義の誤謬」だから正しくないとする。

  1. 生物は子孫を残すものだ。
  2. 従って、生物が子孫を残さないことは正しくない。
  3. 三次元に興味がなければ、子孫が残せない。
  4. 従って、三次元に興味がないのは正しくない。

逆に言うと、安眠練炭氏は自分の趣向(二次元だけに興味があること)が哲学的に正しいことを証明できるだろうか。

自然主義の誤謬」と「分割の誤謬」を用いて安眠練炭氏を説得する人(I氏)は、実は単に彼の意見を述べたに過ぎない。つまり、I氏にとって「三次元*5に興味を持つこと」は自明として正しいのであり、その意見を補強するためにある種の詭弁を弄している。安眠練炭氏は、その誤りを指摘しているワケだ。つまり、感情的な意見は非論理的であるので誤りであるという考え方だ。その意見は確かに正しい。

一方で、同様に安眠練炭氏の意見にも大きな問題を孕んでいる。つまり、氏が「二次元*6のみに興味がある」という趣向が感情的な意見である点だ。氏がI氏の論理的な誤りを指摘することで「三次元に興味を持たなければならない」という「当為を内包した主張*7」に反駁しているが、その目的は「二次元にのみ興味があること」という自分の趣向(感情的命題)を肯定するためと考えて間違いないだろう。

感情的な意見を防衛するために論理を駆使し、相手の感情的な意見に反駁する。「同じ穴の狢」というヤツである。

では、上のエントリ内にある会話において、安眠練炭氏はどのような対応をするのが次善の策であったのだろうか。それは、普通に会話すれば良かったのである。

安眠練炭氏のような知的な人物ならば、普通に会話することによって相手が「自然主義の誤謬」を犯していることをそれとなく気付かせることなど簡単なことだろう*8

また、哲学を解さない知的とは言いがたいタイプの人物を説得するのならば、相手の意見をしっかりと聞き、受け止めた上で、「それでも自分はこう思うんですよ」と相手に理解を求めた方が上策だということは頭の良い方には理解して頂けると思われ(る)。

会話の途中に「でもそれは自然主義の誤謬ですよ」なんて難しい言葉を使って相手に理解を求めようとしている点はちょっと拙い印象を受ける。そもそも、上記のエントリのような鋭い分析を行える頭脳があるのならば、「自然主義的誤謬」を金科玉条のようにする態度もどうだろう*9

*1:あと、精神的な負担も大きいことを付け加えておきたい。

*2:馬鹿だからというワケではなく、根本的な考え方の違いや人間同士の相性の問題。

*3:少なくともムーア自身が主張したモノとは微妙に解釈が違う。

*4:実際、kilemall は「安眠練炭氏は頭が良い人だ」という印象を受けた

*5:生身の人間

*6:虚構の人物

*7:「〜しとけよプゲラ」という意見のこと。

*8:出来なければ「偉い学者の尻馬に乗る頭でっかちなオタク」に過ぎないが。

*9:哲学とは「全てを疑う行為」じゃなかったっけ?