「非モテ系」という逆説

巷の非モテ系な方々は、「モテないこと」に劣等感を覚えることが多いのかもしれないけど、逆に以下のような考え方も出来ることに気付いて欲しい。この考え方に納得できないのならば、それは個人の選択であって kilemall の与り知らぬところですが。

問題提起

  • 「モテる人物のコミュニケーション能力や人格が優れている」と言えるのか
  • 恋愛資本主義において非モテ系は「負け組み」か
  • 異性との交際(恋愛)の優先順位が高いことが人生において有意義か

思考実験とその分析

ここで二人の男性を例に挙げよう。

  • A氏…現在28歳。今まで100人以上の女性と付き合ってきた。まだまだ恋愛できると思うので未婚。
  • B氏…現在30歳。28歳の誕生日まで非モテ系で、お見合いで出会った彼女と結婚した。

一般的な解釈では、モテるA氏はコミュニケーション能力の高い優れた人格の人物とされ、非モテ系のB氏は人格に難があり、惨めな人生を送っている人物だとされるだろう。実際、両者とも28歳の段階では明暗がハッキリと分かれている。

しかし、こうも考えられる。

A氏は、28歳までに100人以上の女性と付き合った経験がある。100人以上は曖昧なので、100人と限定し、初めて彼女を持ったのが中学1年生の誕生日だと仮定する。すると、28歳の誕生日までには5,475日間*1あるので、一人の彼女につき平均して約55日しかない。

さて、この55日間という期間の捉え方が重要である。
A氏の場合、一人の彼女につき55日間程度しか関係を維持できないか、あるいは一人の彼女に対する恋愛感情が醒めやすい(飽きやすい)と考えて間違いない。また本来は「100人以上」ということなので、実際に付き合える期間は更に短くなるハズだ。更に、二股といった複数の女性を同時進行で相手にする*2可能性は十分に考えられる。

また、A氏が次から次へと彼女を変えられるのは、A氏の属性(金持ち, 運動が得意 etc)によると考えられるが、その中でも最も影響が大きい属性は外見(見た目が格好良い)と考えるのが妥当だ。外見は、28歳以降ならば基本的に年齢と共に衰えていく属性である。

一方で、B氏は28歳まで彼女が出来なかった。しかし、30歳現在では、当の彼女と結婚している。つまり、B氏は少なくても730日*3の間、一人の女性との関係を維持し、更に婚約という難易度の高い段階(関係性)にまで達している。

「モテ」は逆説的な欠点

一般的に、モテる人物はコミュニケーション能力が高いと考えられているが、上の結果からは明らかにB氏の方がコミュニケーション能力が高いと言える。何故なら、A氏は一人の異性との関係を長期間維持し、信頼関係を築くのが不得意と考えられるからだ。

このようにモテればモテるほど、一人の異性と関係を維持する期間が短くなる「傾向」があり、破局を向かえた関係が多ければ多いほど、本人に人格的な問題がある「可能性」がある*4

また、「モテる」からこそ一度の出会いに対する信頼関係構築&長期化の動機付けが弱くなり、「非モテ」だからこそ高くなる。結果として、非モテ系の方が恋愛に対する「やる気」が高く、異性との関係を良好に保とうと努力する傾向があるのかもしれない。

疑似科学的な考察

この項目だけは間に受けないで下さい
生理学的な視点で考えると、モテる人物は「恋愛中毒者」と捉えられる。つまり、恋愛をフェネチルアミン*5を得る手段(恋人は道具)として考えている。よって、長期化するほど影響力が大きくなるエンドルフィン*6による安定した多幸感を経験できず、刺激的だが刹那的な恋愛関係を求める傾向が強まると考えられる。
また、フェネチルアミンは関係が深化するほど効果が薄くなるので、ますます関係の短期化に拍車をかける。

一方で、非モテ系は上記のように出会いに対する期待度が高く、刺激的だが不安定な恋愛関係よりも相手との安定した関係性(多幸感を共有する方)を選択するので関係が長期化しやすい。

恋愛資本主義における「非モテ系」の優位性

また、恋愛を市場経済との関連性で例えた「恋愛資本主義」的な点から考察すると更に面白いことが分かる。

この「恋愛」という市場における最終的な目標は「結婚」及びその関係性の維持である。また、市場経済においては効率性と採算性こそが最も重視される。

A氏は、100回以上もの試行を繰り返しながら、未だ最終的な目標を達成していない。また、今までの交際において支払った費用(経済的・精神的・時間的なコスト)は当然莫大なモノになるだろう。

一方で、B氏はたった一回の試行で目標を達成しており、今までの交際において支払った時間的・経済的・精神的コストはA氏と比べると極めて低く、B氏の恋愛経験は優れた効率性と採算性を有していると評価できる。また、結婚生活を長期間維持すればするほど、B氏のコミュニケーション能力の高さが証明されていく。

両者の効率性と採算性を比べれば結果は明らかで、A氏の費用投資効率は極めて低く、採算性は皆無に等しい。また、28歳でありながら一人の異性と長い期間において関係が維持できない弱点(コミュニケーション能力の低さ)は致命的であり、最大の武器である外見が衰えていく今後は、競争力の激減が予想される。

結婚生活における差異

28歳まで自分の好き放題に生きてきたB氏の方は、結婚相手もB氏の趣味に理解があるか、少なくても否定しない可能性が高く*7、婚約後も独身時ほどではないものの、自分の趣味を満喫することが可能だろう*8

一方のA氏は、異性との交際に明け暮れている。即ち、A氏の趣味は「女性との交際」であるため、運良く婚約に成功したとしても、結婚生活は(A氏の)不倫によって解消される可能性が極めて高いか、自分の欲求をずっと抑圧し続けなければならなくなる。

現代の日本社会における離婚率の上昇は、恋愛市場に過剰適応した「優れた競技者」の増加による自然な帰結という考え方も出来る*9

結論

  • 「モテる人物のコミュニケーション能力や人格が優れている」とは必ずしも言えない
  • 恋愛資本主義における「市場の論理」では、むしろ非モテ系に優位がある
  • 恋愛を趣味にしてしまうと、結婚後に「深刻な問題」が発生する危険性が高い

また、次のような比較も可能。

モテ度 恋愛関係 恋愛期間 結婚願望 結婚生活 趣味
モテ 軽い(軽やかな関係) 短〜中期 (恋愛を続けたいので)低い (不倫願望が強いので)不安定 異性との交際
非モテ 重い(親密な関係) 中〜長期 (人目が気になるので)高い (他に相手もいないので)安定 個人的関心

この考察の問題点

  • 異性に対する個人の主観的な評価が含まれていない

結婚できれば誰でも良いというワケではなく、可能な限り自分の好みに近い異性と結婚したいと考えるのが普通であるため。

  • 非モテ系に結婚に至る出会いが訪れる可能性はあるのか。

「ひきこもり」や非富裕層のNEETでない一般的な社会人(学生)をしている限りは、可能性は確率論的に十分にある。しかし、不運な場合は全くないこともある。究極的には「運」が全て。断定は出来ない。

  • 同性愛者の視点が抜け落ちている

同性愛者の場合、そもそも「市場*10」が小さく、また「モテる」ことの意味が異性愛者と違う可能性があるため*11

  • 適度な恋愛経験がある人物を考慮していない

A氏は極端にモテる人物であり、B氏は極端にモテない人物である。これらの条件下では、特別モテるわけでも全くモテないわけでもない数多くの人々が対象に含まれていない(かもしれないという疑問)。

  • 特殊な恋愛事情の人物を考慮していない

また、身近にいる人物*12との恋愛→結婚の過程には、心理学的に一般的な恋愛とは異なる点*13があるため、たった一度の恋愛経験であったとしても当考察の「非モテ系」の範疇には含まれ得ない。

余談(知人の意見から)

以下の文章だけ文体が違うのは、kilemall の意見ではなく、(ネット上ではなくリアル)知人の意見であるため…という但し書きしておこうかと思ったが、引用文にすれば良いのだと今気付いた。面白い意見だったので参考程度にどうぞ。

外見が悪かったり、性格に問題があるような人でも恋愛とか結婚はできます。
これは断言できます。
というか、あなたの両親を見れば分かることじゃないですか。
両親共に内面的にも外見的にも完璧ですか?
それに「ファッションセンスが良いから結婚した」なんて話は聞いたことないんですけど。
脱オタク」に励むオタク&革命的非モテな皆さんは何か勘違いしてると思う。
(kilemall の知人より)

*1:∵[28-13] x 365

*2:ある女性と交際しつつ、一夜限りの関係を繰り返すといったこと。

*3:∵[30-28] x 365

*4:結婚生活を維持できないことも含めれば、宅間守の例がある。

*5:中毒性の高い脳内物質の一つ。向精神作用をもたらす。

*6:脳内物質の一つ。リラックスした幸福感をもたらす。

*7:「〜の趣味は絶対にダメ!キモイ!」という場合は結婚しないので。

*8:現実問題、自分の趣味に邁進する既婚男性は多い。

*9:なお、「趣味は恋愛」な人々を否定するつもりは毛頭ない。

*10:交際可能な人物の絶対数や社会的理解の度合い。

*11:kilemall は同性愛者ではないので考察不可。あー!

*12:幼馴染や親戚, 親が決めた婚約者, 義兄弟 or 義姉妹, 家で働くお手伝いさん etc

*13:単純接触の法則が過度に働いている。