安心の在日認定

凶悪事件が起こると、日本(におけるネット社会)特有の社会現象が発生する。それは、凶悪犯の「在日朝鮮人認定」だ。
不思議なことに、話題になった殆どの凶悪犯罪の犯人がネット上では在日朝鮮人であるということになっている。そういった噂の全てが真実であるのなら、在日朝鮮人というのは非常に凶悪で危険な集団ということになる。

しかし、実際に彼らが在日朝鮮人がどうかは取るに足らないことである。というのは、在日朝鮮人認定というモノは、差し当たって「凶悪犯が(純粋な)日本人でない」ことを主張するための記号に過ぎないからだ。明らかに朝鮮顔でなければ精神障害者でも良いし、それもダメならアニメオタクということにしちゃえ。

さて、この摩訶不思議な(逆)在日認定は、次のような考え方を暗に示している。

凶悪事件を起こした「彼ら」は、「我々」と異なる集団であり、「我々」は「彼ら」のように凶悪犯罪を犯す集団ではない。


凶悪事件は連日連夜のように報道される。そして、私たちは毎日のように信じ難い凶悪犯罪を耳にせざるを得ない。これは、私たちが思っている以上に強い精神的ストレスだ。何故なら、そういった凶悪事件は、私たちが自然に身に付けている「人間性への信頼」を裏切るモノであるからだ。つまり、凶悪事件の報道に晒され続けることで、私たちは自分自身に対して疑いを抱いてしまう。

私たちの中には、このストレスに堪えきれなくなり、何らかの「救い」を求める人々が存在する。この「救い」を求める人々は、凶悪犯たち(=「彼ら」)を「我々」とは根本的に異なる「怪物」と定義することで、少なくても「我々」は凶悪事件を起こすような悪しき存在ではないし、それどころか「我々」は被害者であると思い込むことが出来る。

悲しい話だが、私たち純粋な日本人(もしくは人間)の中にも凶悪事件を犯す凶暴で危険な人物は存在する。そして、そういった人物が私たち自身でないという保証はどこにもない。所詮、私たちは環境と条件が揃えばいつでも「怪物」になり得る弱い生き物なのである。
この現実から目を逸らして、凶悪犯たちが「在日朝鮮人」であるとか「精神障害者」であるとか、「アニメオタク」であるといった虚構に逃げ込んでも事態は一向に好転しない。但し、その凶悪事件が発生する背景を本気で解決する気があるのなら、という場合の話だが*1

*1:凶悪犯罪をネタにして戯れていたいという危険な集団もいるようだ。