異常な親と精神疾患

「仲の良い家族」は近代社会のイデオロギー

しばしば精神疾患の原因として「親が異常(人格)」という理由が挙げられる。しかし、大なり小なり人格に異常性を持っていない親の方が珍しい。完璧な親などいない。結局、精神疾患を持つ本人自身がそういった異常な親とうまく折り合いを付けられなかったのが本来の原因なのだ。

しかし、私たちにはマスメディアを代表とする様々な外的要因から「家族(親子)は仲睦まじくあらねばならない」と思い込まされている。確かに仲が良いに越したことはない。とはいえ、人間同士には相性というものがあり、親子だからといって相性が良いとは限らない。むしろ親を反面教師として育った子ども達は、親と正反対の人格を持つ可能性が高い。

親と仲良くしようとしたばかりに、互いに反発し合う結果となり、関係が修復不可能なまで破壊されてしまうこともある。親とウマが合わないと感じたのならば、適当に折り合いを付けることだけを考え、深い付き合いを避けるのが正しい選択であることもある。深く近付き過ぎない方が長続きする人間関係もあるのだ。

要するに、私たちは「仲の良い家族」というイデオロギーに洗脳されている。イデオロギーは、しばしば倫理や道徳観の源泉となるものだ。故に、私たちは「家族が仲良くあること」に過剰な労力を費やしている。しかし、現実として全ての家庭がうまくいっているわけではない。何故なら、家族もまた他人同士の集団に過ぎないからだ。

だから、親が原因で精神を病んだ(と思い込んでいる)人々というのは、実質的には「仲の良い家族」という洗脳の被害者と捉えるべきなのだろう。