ムーミン式教育術

フィンランド式教育の目的は、国民すべてを意思決定者に育て上げることである。国家にとって都合の良い歯車に仕立てるためのモノではない。

ところで、一般的に国家の意思決定者は権力者である。つまり、権力者にとって被支配民が大きな口を叩くのは都合が悪い。だから普通、権力者は被支配民を洗脳し、油なしでクルクル回る有能な歯車に仕立てようとする(ヨーロッパで売られている世界地図の右端にある国が典型的な例)。

一方で、フィンランド福祉国家である。国民の稼ぐ財の大半が国民同士で共有される。これは擬似的に国民全員が権力者になっていると言って良い(実際、その気があれば働かずとも十分に生活ができる)。故に、フィンランドは国民全員が意思決定に関わる権利があるし、逆に言えば意思決定が可能な知的水準が要求される。このようにして、教育制度も整備されてきた。

ましてやフィンランドは長い間、ソ連に事実上占領されて続けてきたため、ソ連崩壊後は権力の座に空白が出来てしまった。彼らはそれを国民全員で埋めようとし、それに成功したのである。

成功の鍵は「国民全体の教養を高める」ことにある。国家というものは、どうやらエリート教育だけでは立ち行かないらしい。